シタタカライフをご覧いただきありがとうございます。Aki(@Shitataka_Aki)です。
今回の書評は『Google AdSenseマネタイズの教科書』について(以下「のんくら本」と呼ぶ。「のんくら」は著者のひとり早川修さんのペンネーム、というかツイッター名)。主にウェブサイトを運営している人たちの間で話題の一冊です。わたしは2018年11月の発売されたころに手に取り、その後何度か読み返しています。わたし自身ブログを運営してその収益で生活しているのでとても気になる書籍でした。どちらかというとアフィリエイトの収益がメインですが、Google AdSenseでも月数万円の収入を得ています。
※わたしと著者のひとりのa-kiさんとは別人です。以前イベントでご一緒になったときに名簿で同じような名前が並んでしまいちょっと恐縮したことがあります。
定価「1850円+税」となかなかの価格です。食いしんぼうのわたしとしてはこの金額があれば美味しいものが食べられるな~と考えてしまいます。物販アフィリエイトでこの金額を稼ごうとすると18万円くらいの売り上げを出さないといけません。
そしてネット関係の書籍には珍しく紙媒体のみの販売です。電子書籍で気軽に読むことばできません。置いておくにしても場所をとるので、購入にはすこしハードルが高い印象。そんな「のんくら本」ですが、はたして本当に買って読む価値があるのでしょうか。
わたしは身銭を切って読む価値のある本だと感じました。わたしは、アフィリエイトで収益を上げているブロガーなのですが、そんなわたしにとって「のんくら本」は間違いなく良書でした。
のんくら本に書いてある内容
のんくら本はブログやアフィリエイトサイトが抱えがちな課題に対する答えを書いています。ブログ・アフィリエイトにおいてどんな課題があるかというと例えば次の通り。
- 記事の追加・更新を続けなければならない
- グーグルアップデートでアクセスが左右される
- 広告主の撤退
- 記事増加に伴うユーザビリティの低下
これらの課題を解決するひとつのメソッドをのんくら本は提唱しています。ブロガーとして旬の話題を追いかけるのでもなく、アフィリエイターとして大きく瞬発的に稼げる広告を狙うのでもなく、「長く堅実にアクセスしてもらえるサイトを作りGoogle AdSenseで収益を上げる」というのがのんくら本の基本的な考え方です。そしてこれを実現するための様々な知恵が書かれています。のんくら本はブログやアフィリエイトそのものを否定しているわけではありませんが、記事量産型ブログや、広告撤退のリスクがあるアフィリエイトとは一線を画すサイト運営術を勧めています。
ブロガーだととりあえず記事100本を練習として書くことがよく推奨されますよね。これはこれで一理ある考え方なのですが、のんくら本の場合はむしろ100ページで完成を目指します。多くのブログは記事を書いては次にどんなコンテンツを足すかを考えていきますが、のんくら本メソッドは最初に完成形を描いてから、そこにコンテンツを入れていきます(詳しい方法は本を読んでくださいね)。
上にあげたような課題はブログやアフィリエイトビジネスをやっている人なら誰もが直面する問題です。「のんくら本」はそういった課題への対策メソッドを教えてくれます。多くのブロガー・アフィリエイターが参考になる知見を得られることでしょう。
のんくら本がブロガーの参考にならないと言われる理由
のんくら本で想定しているウェブサイト運営の悩みは多くのブロガーにとっても共通する問題です。しかし、それにも関わらず「のんくら本はブロガーの参考にならない」という声も聞きます。その理由はなぜでしょうか。
この原因についてわたしなりにひとつの見解を示します。単刀直入に言うと、のんくら本の提唱するウェブサイトはブロガーにとって楽しくないからです。のんくら本に書かれているウェブサイト運用法は理屈を納得できたとしても、たぶん取り組みたくないブロガーが多いのではないでしょうか。
ブロガーはわがままだからのんくら本は嫌われる
多くのブロガーは実にわがままな生き物です。書くのが好きで、自分が自由に書いたものが広く読まれて、さらにお金も得たい。それがよくあるブロガーの心情です。つまり自己中心的な考え方。
たいていのブロガーは書くのは好きなんです。だからウェブサイトの課題として「記事の追加・更新」が含められることにまず違和感があります。そこは問題じゃない。でものんくら本の発想のスタートは、記事の継続的な更新は大変なことで、更新が滞ることで結果的にサイトの信頼性を損なうことを問題にしています。ブロガーの多くはそのときの最新の話題を書けばよいだけなので、あまり情報の更新を気にしません。新しく書けばよいだけだから。
また誤解をおそれず言えばブロガーは別に読者にとっての利便性なんて考えていないのです。サイト構成を考えるのがめんどくさくて、古い記事のことなんてすぐ忘れます。一度書いた記事なんてもう読み返したくないくらい。過去記事を掘り起こす読者がいれば「珍しい人もいるもんだ」くらいの感覚です。目先のことを書くのは得意だけど、分析したり全体の構成を考えるのは苦手なのがブロガーです。
のんくら本は10年続くウェブサイトのためにはテーマ選びが大切だといいます。相性の良いテーマが限定されるのです。しかしブロガーは自由にテーマを選びたがります。自分の好きなテーマで記事を書くことに意味があるのであって、好きなテーマで書けなければもうブログそのものの価値がなくなります。
例えばカメラ好きでカメラブログを書いてる人いますよね(わたしです)。のんくら本的にはカメラはテーマとしてNGです。詳しい理由はネタバレになるので避けますが、もうこれだけでカメラブロガーは心が折れてしまうでしょう。「なんだ、のんくら本は自分には役に立たないな」となるわけです。
ゲーム感覚でできるブロガーは強い
しかし、話はここで終わりません。ブロガーにもいろんな人がいます。上で書いたのはわたしのイメージする典型的ブロガーです。ブロガー全員がこのように考えているわけではありません。
ブロガーの中には必ずしもフロー情報だけでなく、賞味期限の長いストック型の記事を書く人もいるでしょう。そういう人にとっては、記事の追加だけでなく、古い記事にもきちんとアクセスしてもらう仕組みが大切です。また、テーマ選びを柔軟にできる人もいるし、長く続けるのに相性の良いテーマが得意な人もいるはずです。例えばカメラブログも工夫次第でその寿命は長くなります。10年は難しくても3~5年くらいならできない話ではないでしょう。ただそのためには一定の譲歩と工夫は必要です。その工夫を楽しめるかが問われます。
これは持論ですが、ゲーム感覚でとらえられるブロガーは強いです。多少の制約を単なる足かせではなく「より楽しむためのルール」として認識できればブログを長く続けられます。サッカーは手を使えなかったり、オフサイドがあるから楽しいのです。そういったルールに抵抗感を感じる人にはサッカーは向いていません。
趣味を仕事にしたら好きだったものが嫌いになったという人がいます。そういう人って本当に趣味と仕事の区別がついていないんだと思います。趣味と仕事が違うなんてあたりまえですよ。趣味は自分のためですが、仕事はクライアントのためです。たまたま自分のためにやってることが人のためになることもありますが、それはあくまで例外的な話であって、多くの人は仕事では他人や社会の仕組みに自分を合わせるわけです。だって自分と他人(クライアント)が求めるものは違うから。他人に合わせることを苦痛に思うせいで、趣味を仕事にできないのです。
例えばカメラ好きな人や写真が上手な人がみんなカメラマンに向いているわけではありません。よくプロカメラマンになるためには技術が大切と思う人が多いですがわたしは違う考えです。むしろクライアントのニーズにこたえられるかどうかがプロとアマチュアの差です。
仮に飛行機の写真を撮るのが好きで、非常に高い技術を持っていてもそれでプロになれるとは限りません。なぜなら良い写真を撮ってもそれにお金を払ってくれる人がいないとプロとしては意味がないからです。場合によっては、飛行機の写真ではなく人物撮影にシフトしたほうが良いかもしれません。もしくはお金を出してくれる人を求めてマーケットを変える(例えば外国で活動する)という方法もあるかもしれません。あるいは職人的に技術を極めて飛行機写真の第一人者になればきっと仕事がまいこんでくるでしょう。
これらは趣味で撮影している人ならまったく意識しないところです。こういった工夫・努力を苦痛と感じないのであれば、カメラの趣味を仕事にすることも可能だと思います。これを不自由でつらいことのように感じるとカメラが楽しくなくなるかもしれません。
ブログでお金を稼ぐのも似たような構造です。好きなことを本当にただ自由に書いているだけでお金を得られることはなかなかありません。なぜか最近は楽して稼ぐ手段としてブログに注目する人がいるようですが、別にブログは魔法でもなんでもありません。参入障壁が低いだけでただの広告ビジネス。趣味ブログではなくてお金を効率的にたくさん稼ぎたいなら工夫や譲歩、そして努力が必要です。ブログを運営する人も読者や広告主のことを考えて、それにあわせなければなりません。それが苦痛ならブログで無理にお金を稼ごうとせずに非営利で運用したほうがずっと楽しいはずです。
話をのんくら本にもどしますが、本に書かれているのはウェブサイト広告ビジネスの構造と、それに対応するひとつのビジネスモデルです。いかに長くアクセスと収益を維持するかについて考えられていて、必要な情報を整理してうまくまとめられています。正直この手法は難易度が高く人を選ぶので、書かれていることをそのまま全部真似できる人は少ないし、実行に移すのは難しいでしょう。しかし、体系的にまとめられた知見はそれだけでとても貴重です。具体的なテクニックだけでなく、成功者が根底に抱いている理論やビジョンを学ぶことに意味があります。これがわたしがのんくら本をブロガーにおすすめする理由です。ただ他人のノウハウを真似ているだけではブログで長くまとまった収益を上げることは難しいでしょう。本を読んでまた自分の頭で考えて行動できる人はのんくら本を読むと良いです。お手軽な知識を求めている人にはあまり意味がないので買う必要はないです。
わたしがこの本で学んだこと・得たもの
わたしがのんくら本を読んで学んだことや、読んでから起こった変化についてまとめると次のようになります。
- 安定したアクセスが見込めるテーマの選び方
- 事前準備・リサーチの大切さ
- グーグルアップデートに左右されにくいサイトの運用法
- ウェブサイトのユーザビリティを向上させる方法
- ブログ型・完結型・ツール型サイトのそれぞれの魅力と欠点
- ブログが一層好きになった
- ミニサイトを作ってみたくなった
ほかにもSEOで上位をとるためのノウハウやGoogle AdSenseで収益を上げる方法も書籍のメインコンテンツではあるのですが、これらは今のわたしにはあまり重要な情報ではありませんでした。一般的にはとても価値ある内容だとは思いますが、わたしがいま目指しているものとはちょっと違うのでこのあたりについてはノーコメントとしておきます。もう少し時間がたてばこのあたりも参考にさせてもらうかもしれません。
ブログ型のサイトに関する話は限定的なのですが、改めてなぜ自分がブログを続けているのか再確認できる良い機会になりました。のんくら本のメソッドと、わたしを含む多くのブロガーのメソッドは大きく異なるので、人によってはのんくら本を読むことでブログを否定されているように感じるかもしれません。ですがわたしは異なる考え方に出会ったことで、改めてブログをもっと頑張りたいと感じました。
また、ブログに加えてミニサイト制作に挑戦してみたいとも考えるようになりました。これまではブログが好きでそのスタイル以外をあまり考えてこなかったのですが、小さなサイトなら完結型やツール型のものを作ってみたいです。そのノウハウをまたブログにも応用できるはずなので良い勉強になりそうです。
まとめ
のんくら本は「教科書」と題しているように、この書籍ではウェブサイトの広告ビジネスに関する問題とその答えとなるビジネスモデルが書かれています。しかし、これはあくまでひとつの答えであって、のんくら本以外の答えはあると思います。また、教科書の内容を全部をまねする必要もないでしょう。部分的に自分が使えるノウハウだけを使うのも有意義なはずです。
実際のところのんくら本スタイルとわたしのブログスタイルは大きく違います。しかし、根幹となる考え方については共感するところ、納得するところがたくさんありました。おそらくウェブサイト運営と広告ビジネスにおける課題だったり、目指すビジョンというのは多くの人に共通するのでしょう。一方でそれにどう取り組むかは人それぞれで異なり、正解はいくつかあるのだと思います。
のんくら本はウェブサイトの運用やネット広告ビジネスの普遍的な課題について体系的に整理してくれています。仮に書かれている方法論すべてが自分に応用できなくても、読む価値はあるのではないでしょうか。
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